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刊行案内(一部抜粋)
お客様インタビュー
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刊行案内
あとがき家庭崩壊後は沈黙を保っていたが、今年の春からオープンにして、再び私のチャンネルを開いた。色々な方と再び連絡を取り始めた。いろいろなお便りが自宅にまで届いた。ところが、嘉久丸ではなく喜久丸(キクマル)と書いて来る人がいる。ユーモアのある方は上川内□○様と書いて来た。確かにカクマルとは読むが、これをきちんと届けたポストマンはもっと偉い。 名前を正しく覚えて欲しい。上川内なのに上河内と書いて来る人もいる。これは、ある意味ではしょうがない。私の苗字は中学三年まで上河内(かみこうち)であった。なにしろ、親父が名前に凝っていたものだから、子供はその犠牲になる。学校で何度笑われたことか。 七十年安保の時に大学に入った。いきなり、カクマル出てゆけ! と叫ばれたことがある。「奴ら、何で俺の名前を?」と不思議に思った。やがて学生運動に絡んでいくうちに、“カクマル”とは、“革命的マルクス主義者”の略語で、中核が革マル殲滅を叫んでいた声であったことを後で知った。私の方が生まれたのが早かった。元祖“カクマル”は私の方である。 近所のおばあさんも、そろそろ“あれ”が始まって来たようで、私に会うたびに名前を思い出せないでいる。徹夜して私の名前を覚えた時は、向こうから「わし、あんたの名前知っとるよ」と自信を持って近寄って来るおばあさんもいる。 一冊の本を書くというのは大変なことである。私が関心を持っている梅田望夫氏は「ウェブ進化論」の“あとがき”でこう書いている。 「・・・膨大な時間の集中を要する。私の場合、日々の仕事の制約から、ほとんど人に会わずに一つのことに集中できるのは長くても五週間である。そこで五週間精一杯ベストを尽くし、それでもまとまらなくてはしかたがないと腹をくくり、毎朝午前三時に起床し、・・・・」 私は、梅田氏のように朝三時に起きる“狂気”はないが、集中できる時間のスパンは似ているところがある。前回の私の作品『中米の風』は四十五日で書いた。本書も偶然にも四十五日で書き終えた。以前“宅地建物取引主任”の勉強も四十五日間だけ勉強して合格した。私にとって物事に集中できる時間は四十五日なのかもしれない。それ以下だと成果がないし、それ以上だと中だるみして効果がないのかもしれない。これからは四十五日のリズムは大切にしてゆこう。特にこれから迎える恋愛事は四十五日で終結することがないように注意しよう。 旅のトラブルは本書だけではない。世界を自転車で回っている時のトラブルは、次の作品『三途の河もチャリンコで』にまとめる予定である。女友達に「三途の河も自転車で渡るぞ」と言ったら「それ二人乗りできる?」と真面目な顔で聞いてきた。私も真面目な顔で答えた。 校正は前回、市川日本語学院の専任講師の皆様にお願いしたが、今回は学院事務局の皆さんにお願いした。三人とも旅が大好きだからだ。「旅はトラブル」の題字を書いてくれた樋口ゆかり事務局長。子育てが終われば、すぐにでも留学していたアモイを再訪しようと考えている中国語堪能な林さん。中国語、韓国語、日本語のトリリンガルな才女の崔さん。旅を愛する皆さん、謝謝、カムサハムニダ。 皆様が冥途に来られる時は、私が誠意を持って御案内いたします。あちらで「冥途取引主任」の資格も四十五日で取ります。最近は「世界冥途遺産めぐり」が人気があるようです。まもなく「冥途遺産検定試験」も始まるという噂です。あちらの私の住所は天国、冥途市、三途ノ河町五九六三番地です。 キャンセルはお早めに。三途の河を渡るのは、かなり体力がいります。一気に渡ることをためらっている方のために中洲があります。そこに思案橋というのがありまして、泳ぎ疲れた方のためにサイクリング・コースが用意してあります。料金は着払いです。思案橋を越されますとゲートが閉じまして現世に戻ることができないシステムになっておりますのでご注意ください。ホームは丸の内線と同じで最近無人化されましたので、係員はいません。途中体調を壊されて戻られた方は、お家の方にメールを送ってもらって下さい。 あっ、それから名前をちゃんと覚えてから来てくださいね。似たような業者がたくさんいますから。銚子丸ではなくカクマルですよ。覚えきれない人は胸にワッペンを付けてからおいでください。こちらも、皆様が迷子にならないように目印として“歓迎・冥途周遊・御一行様”という、黄色いハンカチのノボリを出しておきます。山田監督や高倉健もゲスト出演してくれるかも知れません。 旅立ちが近い方は、特に健康に留意され、その日に備えておいて下さい。前日に添乗員から確認の電話を入れることはありません。あくまでも“現地集合”です。風邪をひかれている方も心配ありません。マスクやインフルエンザのワクチンも冥途省が用意してくれます。健康保険証は無用です。 それでは良い御旅行を! ボン・ボヤージ。ウエル・カム・トゥ・冥途。 |