自費出版の会なら10冊89800円から。編集のプロがしっかりサポートするので安心です。 |
|
刊行案内(一部抜粋)
お客様インタビュー
|
刊行案内
はじめに『中米の風』の出版を待たずに、三冊の本を同時に書き始めた。これまで苦労して考えついた文章を、早いうちに消化したかった。それをボツにすると、あまりにもストレスが溜まりそうに思えた。 それらの文章は通勤中に思いついたものが多い。忘れないうちに「言葉遊び」をメモできる時はありがたい。メモができないで、脳内のどの引き出しに入れるかを悩んでいる時には、電車に乗っていることさえ忘れる日が続いた。 記憶がうまくまとまらない時は、長考に入る。気がついたら津田沼駅を越え終点の千葉駅にいた。あるいは、ひどい時は最終電車を乗り逃した。アルコールは〇・一パーセントも入っていない。脳内はクリアーで冷静であった。それなのに乗り逃した。その時は私は最後の車両にいたので、なぜ「高根公団駅」で停まらなかったかを車掌にきつく注意したら、そんな事実はなく「確かに停まった」と言う。それでも納得がいかないので、乗り越した駅の係員に聞いたら、相手にしてくれず「乗り越し料金」も取られた。戻りがない最終電車である。 行きたくないところまで運ばれ、おまけに「追加料金」まで取られた私は納得がいかない。もしかしたら「昨夜、新京成、高根公団駅を車掌のミスで通過しました」などの記事がないかを千葉版で探したが、載っていなかった。今になっても、どうも納得がいかない。 結果的には、旅のトラブル集が早く溜まりそうであった。が、まだ足りない。足りないのは単純時間ではなく、過去にトランスする濃厚な時空だ。自宅にいてはそれができぬ。できたとしてもその世界の入り口まで辿り着くのに時間がかかり過ぎる。濃厚な時空のゲートを探せ。私は「カフカ少年」になりたい。 よし、それでは実行しようと、北海道へ飛んだ。自転車とキャンプの旅だ。キャンプ場では太陽が落ち、暗くなると、その後、何もすることがない。テレビもないし、本も読めない。星を見ながら、言葉を紡ぐしかない。月に自分の人生を問いかけるしかない。何かを書くには最高の舞台が整う。 テントの周りの「熊笹」は涼しい夜風に揺られ「カクマルさん、素敵、もっと書いて」と笹やく。薄闇の中の白樺は「長い厳冬を耐えている、それでも生きよ」と宮崎アニメ調で残り少ない私の人生を励ます。懐中電灯の明かりでメールを書く。関東からはリアル・タイムで「蒸し暑い東京です。北海道がうらやましい、そちらへ行きたい」などとメールが入る。う〜ん、何となく両方の時空にいる感じで気持が良い。 本書は楽しく書いている。夜に夢想し、朝まとめる。散歩には全長一・四キロのポプラ並木。パソコンの電源はキャンプ場から自転車で五分のバラ公園に隣接された「色彩館」から頂いている。BGMのクラシックが耳に心地よい。昨日はドボルザーク特集、今日はビバルディ。 近くにあるパーク・ゴルフでは三十六ホール回り、アンダー・パーを記録した。あわや、ホールイン・ワン、五十六メートルをピン横五センチの快感も味わった。昨日、銭湯の露天風呂のTVを観ながら道内最高気温三十四度を記録したことを知った。昼中は暑いが、夕刻の五時頃から涼しくなり、八時になるとテント内が寒くなる。寒がりの私は長袖二枚に薄い毛布を掛けて寝る。 朝になると小鳥が目覚まし時計になる。朝起きが苦手な私が、六時にはもう起きている。夜になるとやることがないから、十時にはもう横になる。すると早く眼が覚めて、夜の明けるのが待ち遠しくなる。原稿を書いていると、トンボが「何を書いてるの」と肩にとまり、覗き込む。「ブログに書いているので、後で読んでね」と優しく教えてあげると、連れのトンボと絡み合って、どこかへ飛んで行った。「ネット・カフェ・トンボ亭」に行ったのだろうか? ところが、今日は閉店だったらしく、とんぼ返りで帰って来て、また私の肩にとまった。 二〇〇九・八・十二 いわみざわ公園キャンプ場(北海道) |