今人気の、二桁や三桁の数字までを対象にするインド式九九暗算は、いくつかのルール(「スートラ」お経)を習得して、それを自由に操る方法に秘けつがある。日本の九九暗算は、何度も繰り返し、すらすら言えるように丸暗記する作業に努力の力点がある。哲学が違うのだと思う。この本は、このインド人のやりかたをまねて、文型を作る基本の五つと、その文型と文型を原因―結果の関係を示す七つと、そうした原因―結果に関心のない並列や選択の関係をあらわす五つ、あわせて十七のルールを習得し、その応用で、中国語の会話から読解、作文、リスニングの能力を高めよう、という手法を採用した。
日本人は「てにをは」を使って表現するのに対し、孤立語である中国語は、語をどう並べるか、に重点がある。長い間、日本人は、「漢文」というものを編み出し、返り点、果ては一、二、三などの数字を使い語順をひっくり返して外国語である中国語を理解してきた。それ自体が「日本の文化」の一部ではある。ただ、戦後、英語を勉強する際も、日本人は「関係代名詞」など語順をひっくり返して理解しようとした。これでは、国際会議や取引、会話、英語ニュースを書く、など実際に役立たない。中国語もこれから、実用の時代に入った。本書は十七のルールを例文で「中国語ではこの場合こういう言い方をするのか」を体得してもらうのが目的だ。日本人には苦手の発音は初学者には煩雑なので、例文にはその発音記号であるピンインをすべてにつけた。