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自分史

難き日

著 / 片山千鶴子
サイズ:四六判
製本:ハードカバー
ページ数:108ページ
発行日:2013年2月14日
内容紹介(一部)
1.記憶のはじまり

私が物心ついたのは二、三歳の頃だった。
奈良県の大和高田市で水商売をしていた頃である。
家人は夜遅くまで商売をしているので朝が遅い。
私はよく祖母に雨戸を開けてもらって
向かいの店にアイスケーキを買いに行った。
背伸びをし、小銭を握り締めた手を差し出して
お金を渡そうとするのだが、店の人には見えない。
祖母が家の前から声を掛けてくれて
ようやく店の人が気が付いてくれた。
これが生まれて一番最初の記憶として
私の中にはっきりと残っている。

母から聞いた話では、当時住んでいた家は高田の駅前で、
三階建てなのだが、敷地が道路より低いので
表からは二階建てにしか見えなかったそうだ。
そして、私は二歳上の姉と二歳下の妹と三人姉妹だった。

私たちの住まいは一階で、
食事のときはスプーンを使って一人で食べるのだが、
口に入るよりこぼれる方が多く、
いつもゴザを敷いてもらっていた。
そのゴザを裏へ持って行って払うと
隣の家で飼っているニワトリの餌になったそうだ。

(以下略)