私は2006年からイタリア国立サッサリ大学政治学部の客員教授として
「日本ブランドの特質における基層としての日本文化」についての講義、
研究協力、資料提供をしてきました。
招聘して下さった方はパオロ プッディーヌ教授で、
若い頃に東大史料編纂所に留学され、
日本最初の本格的な日伊辞典を編纂し、
横井小楠という幕末の思想家を初めてヨーロッパに紹介されました。
それらの著しい日本文化への貢献が2009年旭日章叙勲へと繋がりました。
彼は稀にみる日本学における碩学です。
このプッディーヌ教授の紹介で、
この書の出版記念シンポジュームの折に著者ルイジ ソレッタ神父にお会いしました。
その時はさほど真剣には読んでいないまま出席しましたが、
突然指名されての読後感のスピーチを無難に切り抜け、
それで大満足したまま5年間が経ちました。
「夜半、日頭 明らかなり」は世阿弥の『九位』という芸論の中にあります。
芸の格を9つに分けた時の最高位が九位で、
「太陽は真夜中に輝く=つまり言葉で語られない、
論理から外れたところにある」ということです。
著者の異文化に対する虚心坦懐な接し方、
又修行して得た禅の悟りなど様様な境地を表すのにふさわしい章句です。
ソレッタ神父はこれをカトリック信者で能の仕舞の名手から教わったそうです。
積んでおいたままのこの本を訳そうと思い立たせたのは、
2011年3月の我が国を襲った未曽有の悲劇でした。
タイトル「太陽は真夜中に輝く」を、
何が何でも「日本は大災難の中でも力強く再生する」と
意訳したい強い祈念が、私を後押ししました。
(以下略)