プレースメントテスト
桜舞い散る四月、日本語学校も新入生の受け入れで慌ただしい。
入学式の後はすぐ、プレースメントテスト(クラス分けのテスト)を実施する。
テストの結果が出るが早いか、教師はクラス編成に取りかかる。
日本語学習歴の有無、国籍、
性別等を吟味しながら行うこのクラス編成は、終電間際まで及ぶ。
留学生は、人生を懸けて、日本で日本語を学ぼうと来日する。
だから、一人一人の学習の道標を、ここで作らなければならないのだ。
この年、フィリピン人介護福祉士候補生の研修担当になったのは、
私と、私より六歳年下のI先生。
彼女は、きめ細やかな性格で、私とは正反対だった。
例年なら私達も、留学生の受け入れ準備に携わっているのだが、この年は違った。
他の先生がクラス編成をしている傍ら、
私達は五月にやってくる候補生の受け入れ準備に追われていた。
「先生、この資料によると、
日本に住んでいたことがある人、何人かいますね」とI先生。
「本当だ。七十八人、ほとんど日本語の勉強したことないって聞いたけど、
こうなるとレベル別クラス分けの必要があるね」
(以下略)