幼児期から小学生へと
私は順調に育っていたが、
二歳になったとき曾祖母におんぶされていて、
右足の膝の筋をちがえてしまった。
膝小僧が大きく腫れて痛さに耐えきれず、
火が付くように泣き叫んだ。
両親は慌てて近所の医者に診てもらった。
医師は「これは手術をしなければ治りません。
でも手術をすればびっこになります」と言われた。
びっくりした両親は、これは大変、
女の子だからびっこにだけはさせたくないと思い、
手術をしないで治してくれる医者はいないかと、
血まなこになって探し歩いた。
努力の末、両親の必死の願いがかない、
膏薬だけで治してくれる医者を探し当てた。
この医院で手当てをしてもらった。
時間は大分かかったが、
大きく腫れていた膝が少しずつ小さくなっていった。
おかげで快復することが出来て、私はびっこにならずに済んだ。
一年が過ぎ、昭和十四年、私は三歳になった。
そのころ父は私を溺愛していた。
ある日障子をばりばりに破いてあるのを見つけ、
「これは誰が破いたのか」と目を吊り上げ怒ったが、
私が「あたちがやった」と白状すると父は途端に態度を変え、
「おおサキか、女の子だからこれくらいのことはよしよし」
と言って笑顔を見せる始末。
(以下略)