はじめに
実は、私は文章を書くのが苦手だ。
その私が、こうして文を綴ろうと思い立ったのは何故なのか、そこから書いてみよう。
まず、平成二十年に還暦を迎え、ごく自然な感情として
自らの半生を振り返ってみたいという思いが出てきた。
同級生や同世代の知人友人と会う機会には、単なる思い出話というよりも、
それぞれの半生全体がどういうものであったのか、
「自分」とはどんな存在だったのか、またこれからどう生きていくか、
といった話になっていくことも多い。
しかし、ただ頭の中で自分の来し方いく末を思っているだけでは、
いかにも漠然としており、断片的な出来事や感情が堂々巡りしているばかりだ。
そこで、カレンダーの裏紙などに、
自分自身が生まれた時からの年表のようなものをつくってみた。
さらに、印象的に覚えている場所を書き出し、
そこから蘇る思い出を書き連ねたりしてみたのが始まりだった。
(以下略)