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半生回想記

脊髄損傷者が綴る半生回想記
今ひとたびの旅立ち

著 / 出口臥龍
サイズ:A5判
製本:ソフトカバー
ページ数:232ページ
発行日:2011年12月19日
価格:1,500円(+消費税)
ISBN:978-4-903935-70-6
ご好評につき、完売いたしました。

出口様は他にも書籍を作られています。


小説


内容紹介(あとがき)
あとがき

生きているということが、辛い時期がありました。

朝、目覚めてから、夜、寝付くまで、いや眠っている間でさえ、
精神的、身体的苦痛に苛まれ、その苦痛から逃れたい一心でした。
苦痛は尋常ではありません。死ねば楽になる、
ミイラのような体で天井を見詰めながら、
苦痛から逃れることばかりを請い願っていました。

事故に遭ったのは平成十六年一月十二日、出張中の台湾でした。
脊髄損傷の中でも重篤とされる頚髄損傷です。
脊髄の首の部分を傷つけ、四肢麻痺となったのです。
事故当日まで自分の足で歩き、自分の手で物を持っていたのが、
この日以降、まるで他人の手足のようになったのですから、
その現実をどのように受け入れればよいのか、気も狂わんばかりの日々でした。
三年以上続いたでしょうか。

「プロローグ」にも記したように、思い出すことといったら、
三十年にわたって歩いてきた世界の人々との交流や、恥ずかしい失敗談ばかりです。
たまに体調のいい日があると、
介護で訪問してくださる方々に聞いてもらうこともありました。

「その話面白い。本にしてみたら」

と勧めてくれたのは薗部さんという方でした。
幸いにして、手足が利かなくとも声で文章をつづる方法を、
神奈川リハビリテーション病院で訓練していました。
科学技術の進歩ってすごいですね。声で文章が書けるんですからね。

私にとって文芸作品は初めての試みでした。
体調の悪いときでも自らに鞭打つようにコンピューターに向き合ってきました。
作業を進めるなかで思わぬ発見もあります。
文を書いている間は、精神的、身体的苦痛からはすっかり開放されていたのです。
これは大きな発見でした。何かに夢中になること、
つまり人生に目標を設けることが、苦痛から逃れる最良の方法だったのです。

(以下略)