老い初むる
老い初むる女心のゆらぎつつ友と揃いのブローチを買う
老夫婦支え合いつつ慎ましく生くる日々なり幾年つづく
花浄土句集をよみて寂々と老の心の沁みて涙す
寒の風身に沁むるらし頸すくめいでゆく夫の背に老のかげ
鬼の絵の福豆撒きて齢重ね老は生きなむ心穏しく
「美しい老年めざす」季刊誌を賜びし友はも吾も老い初む
父母逝きし齢越えきて老友会に夫と入る日桜咲き初む
何時の間にかくは老いしと思ほゆる老友会の席に座を占め
村長の講話に耳を傾けて過疎進む地の未来を思う
朝九時を迎えの車に和みゆく入会初の鬼怒川への旅
へその緒は切れぬ親子のきずなにて涙して見る「釜石情話」
一年を寿学級受講生となりて学ばむ若きにかえり
交通規則守らぬ老の横断の危険はらむを映画に学ぶ
小学生のごとき素直な心となりて交通道徳の実践学ぶ
歌碑の上に立ち給いける女人の像の信仰深き御姿拝す
流麗な文字目に追いて詠み給う女偲びつつ歌碑に寄りゆく