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研究・評論

JAPAN考

著者 / 鷲 直仁
サイズ:四六判
製本:ソフトカバー
ページ数:120ページ
発行日:2010年2月24日
価格:952円(+消費税)
ISBN:978-4-903935-33-1
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あとがき

本書では、近年私が研究対象としてきた、19世紀のイギリスを中心とする英語圏文化と日本文化について、比較文化の見地から考察した。

16世紀、日本で織田信長が本能寺で暗殺された頃(1582)、イギリスではシェークスピアがその才能を生かして数々の劇を精力的に書き始めた。日本ではその後、信長の後継者である豊臣秀吉が、知略の限りを尽くして天下を統一する。秀吉は、どうしてそこまで人の心が読めるのかと感心するほど敵の行動を予測しながら、相手を調略もしくは攻撃する。富と権力の前に人はひれ伏すが、大切に思う人の前では権力者も無力である。晩年の秀吉も例外ではなかった。シェークスピアの『リア王』には、変わり続ける人間関係を通じて老王リアの悲劇が鮮やかに描かれている。そしてその『リア王』をもとに日本の黒澤明は映画『乱』を製作した。この映画で表現したように、『リア王』の世界は、そのまま戦国時代の日本に舞台を移して再現することが可能である。つまり日本でもイギリスでも、喜劇や悲劇は人々の生活とともに存在していたし、現在でも存在しているのである。本書では時間や空間を越えた人々の営みを理解しようと4章にわたって試みた。

最後に、常に的確なアドバイスを下さり、なおかつ、きらりと光る編集センスをお持ちのブックコム三浦均氏に深く感謝致します。

2010年1月 半分姿を現し始めた
東京スカイツリーを西に眺めながら

鷲 直仁