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研究・評論

JAPAN考

著者 / 鷲 直仁
サイズ:四六判
製本:ソフトカバー
ページ数:120ページ
発行日:2010年2月24日
価格:952円(+消費税)
ISBN:978-4-903935-33-1
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内容紹介(一部)
はじめに―日本人はなぜ英語を学んでいるのか?
JAPAN考 本文画像
第1章扉

現在、世界にはインターネットが普及し、その主要言語は英語である。日本でも、高校・大学受験や、就職試験の際に重要な条件の一つとしてTOEICや英検などの英語の高得点が要求される。一般の人でも英会話を習いたいという人は多いし、仕事や海外旅行で英語を使いこなしたいと願っている人の潜在的な数はかなりにのぼるだろう。

では、なぜ日本人のこのような英語学習熱の高い状態が出来上がったのだろうか?

アメリカは、世界の指導者であることを自認しており、当面その優位は揺るぎそうもない。日本が太平洋戦争でアメリカに負けて以来、英語教育が教育現場で本格的に始まり、結局現在学校でも社会でも英語に対するニーズは高まる一方である。

ここで少しイギリスの歴史に触れたい。もともと英語はイギリスだけで使用されていた言語であったのだが、イギリスから17世紀初頭にピューリタンたちが新大陸に渡って行ってアメリカを建国したり、19世紀にイギリスがその植民地を拡大したりしたので、それに伴い、英語の使用される地域が広がっていった。

イギリスの歴史の紀元前後についてはローマ帝国の影響を抜きには語れない。共和国時代の紀元前55年と54年に、軍隊を率いたジュリアス・シーザーもブリテン島(イギリス)を攻めている。現在イギリス南西部にあるバース (Bath) という都市も、ローマ時代にAquae Sulisという名前で建設された。そして、1世紀後半には、バースに温泉場も作られた。ローマ人たちは、現在の日本人同様に風呂好きであった。この時期ブリテン島の大半はローマによって制圧され、ローマの属領ブリタニア (Britannia) となった。この語が英語のブリテン (Britain) 、つまりイギリスとなったのである。その後のイギリスの発展に伴い、英語の勢力範囲は拡大。そして現在日本人は英語を学んでいるわけである。

だが日本人が英語を「学んでいない」という可能性も十分あった。例えば、紀元60年にブリテン島ではローマ支配に対抗して、女王ブーディッカ (Boudicca) の反乱が起きた。ブーディッカは敗北したが、もし仮にこの女王が勝っていたら西洋史は変わっているはずであり、そうであれば果たして日本で今のような英語教育が行われているかどうかは、わからない。

また、日本の歴史を見ると元寇や日露戦争などがあり、日本が消滅していた可能性も十分ある。そして、もちろん現在のような形での英語学習が決定的になったのは、60年以上前の太平洋戦争で日本がアメリカに敗北したからであり、このことによって英語教育が日本で行われることが決定的になったわけである。

日本では、2011年度から国公立の小学校で英語学習が正式に導入される。今こそ、日本で英語を学ぶことの意義と、その影響について考察したい。言葉には、その言葉の背景となる国の歴史と文化が密接に関係する。日本文化と英語圏文化について比較文化的な見地から読み解きたい。