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書簡集

書簡集 〜海からの手紙

著者 / 安村介一
サイズ:四六判
製本:ハードカバー
ページ数:274ページ(モノクロ)
発行日:2009年11月17日
はじめに

この本は、海軍軍人であった私の曽祖父 安村介一が第一次世界大戦中の大正五年(1916)大佐に進級し、艦長として初めて軍艦「新高」及び「須磨」にてインド洋でのドイツ仮装巡洋艦の警備に従事していた間に、妻と子供達に宛てた手紙をまとめたものです。

書簡集〜海からの手紙 画像1
祖母 中山令子と
伯母 工藤和代がまとめたノート

九十年以上の時を経て大切に保存されていたこれらの手紙は、昭和五十五年頃、祖母 中山令子(介一長女)と伯母 工藤和代(介一孫・令子四女)により手書きの本としてまとめられていました。パソコンも無かった当時、仕事や家庭を持つ傍らで編集作業を行うに当り、並々ならぬ労力が費やされた事は容易に想像でき、改めて祖母と伯母に感謝の気持ちを伝えたいと思います。

しかし、当時幼かった私はこの本に触れる事なく月日は流れ、大人になった今ようやく拝読する事となり、自分のルーツである曽祖父の当時の仕事や生活、社会情勢等について多くを知る事が出来ました。そして平成二十年(2008)十一月、祖母が百歳を迎える記念として私が改めて出版しようと思い立ち、同年三月より編集作業に取り掛かりました。

再編集に当り多くの言葉や事柄について調査した事で、より一層興味が深まる一方で、想像以上の時間を費やしたため、残念ながら祖母の誕生日に間に合わなくなってしまいました。また、作業途中の平成二十年九月一日には父 中山光正(介一孫・令子長男)が、更に同年十一月二十九日には大叔母 黒瀬満子(介一次女・令子妹)が天に召されるという思いもよらない不幸に見舞われ、親戚一同深い悲しみに包まれると共に編集作業を中断せざるを得なくなりました。病床で原稿を楽しそうに読んでいた父に、完成品を手渡すことが出来なかった事が無念でなりません。

父は幼い時に父親 中山静太(令子夫)を亡くしたこともあり、曽祖父には大変可愛がられて育ったと聞いています。今は天国の皆と共にこの本の完成を喜んでくれている事と思います。

曽祖父が残したこれらの手紙は、私信である一方で歴史的価値を持つ重要な資料であると考えます。戦争についての認識や先祖の功績を後世に継承して行く事は、私にできる何よりの供養だと考え、この本を祖母を始め親戚や親しい友人に捧げたいと思います。

最後になりましたが、この本を完成するに当り惜しみなく協力し、励ましてくれた両親、 夫、親戚、友人、相談に乗って下さった出版社の三浦様に心よりお礼申し上げます。

平成二十一年九月吉日  津田 智枝