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本書を書き始めて、45 日が過ぎた。いつもの生活のリズムが壊れたが、言いたいことが書けて満足している。男はストレスが溜まると寡黙になる傾向があるが、貝殻に閉じこもらないで、自己の失敗をオープンしたことで精神が安定してきた。

この間、職場の市川日本語学院の皆さんとその家族の皆さんから激励の言葉を直接間接的に頂いた。独りではこんなに楽しく書けなかった。「楽しく読んでいます」「早く次を書いて」などの声は私の背を押してくれた。自分の書いていることで人が喜んでくれて、とても有難い、と思った。考えられない意見もあった。「本当にカク丸さんが書いているの？　誰かゴーストライターが？」という意見には参った。ある若いきれいな先生からは「走る整体師ではなくて“走る変態”」にしたら、と最上級のお褒めを頂いた。当たっているだけに反論ができない。

いつも年末から長い休みに入る私に、「帰ってきたら、君の机はないよ」と言われる校長先生にも、現在まで机があることを感謝したい。妻から逃げられた後の数ある困難を、本人も気がつかないうちに“ついうっかり乗り越え”させられてしまったのは、上司の温かい配慮があったからである。

本書が世に出たために、避けられない弊害も覚悟している。まず本書はベストセラーになるので、やがて長崎の母の眼にも留まるであろう。すると、私の家庭崩壊が知られることになる。「なんで、いままで隠しとったとね、そぎゃん子供に育てた覚えはなかバイ」から始まる苦言で、また新しい本ができるだろう。さらに憂鬱なのは、これまでお付き合いしていただいてきた女性の友達から、絶縁状を叩きつけられることだ。「スペイン語の勉強のためだと思っていましたが、ずいぶんと楽しまれたのね。マリーナとは肉体関係があったかどうか、はっきり言いなさい」とナイフをちらつかせながら自白を強制させられるであろう。いいことは何もなさそうだ。ベストセラーになると税金対策も考えなければならない。もうすぐ還暦、二重苦三重苦五十九だ！ 嗚呼、大洪水よ、わが亡き後に来たれ！

まだ、書きたい章が残っている。たとえば「男はロマンを追い、女はフマンを負う」「正しい地球の迷いかた」「陶酔のラテン音楽」「信じるものはだまされる」「ウソも芸術カリビアン」「墓場へ行く前にグアテマラへ行こう」などの章は私を代表する力作になる予感がしていたが、ここで1度幕を降ろす。

この日に幕を降ろす理由は、今日が特別な日だからである。この日は私の誕生日よりも大事な日。6 24 日は「まえがき」に書いたように結婚記念日であり家庭崩壊記念日でもある。本書を書き始めた時は、まさか6 月24 日が3 度目の意義ある日になるとは思っていなかった。カク丸完全復活の狼煙をあげるには、この日は最高の記念日だ。さて独りで祝うことになるがソヴィニオン・ブランはすでに買ってある。いつか2 人でこの日を祝う時が来るのだろうか？　もっともその時が来たら6・24 の意味は消滅し、その人との出会いが運命的な日となり、すべてが過去の物となるであろう。果たして“未知との遭遇”はいかに？

最後に本書をいやいやながらも校正してくれたのは市川日本語学院の専任講師の皆様。どんなわがままも叶えてくれる、母なる大地の加藤教務主任をはじめ、イケメン武道家・木村先生及び花婿募集中の佐藤綾先生に熱く感謝したい。時々出てくる私の意味不明な日本語をよく最後まで読んでくれました。改めて、グラシアス！