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小説

黎明 THE BEGINNING

作者 / 竹内一尊
サイズ:四六判
製本:ソフトカバー
ページ数:160ページ(モノクロ)
発行日:2009年8月8日
価格:952円(+消費税)
ISBN:978-4-903935-19-5
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あとがき

人はそれぞれ自分なりの尺度を持っている。違う環境に生まれ、育ち、違う知能を持ち、違う生きかたを選んで得た、尺度である。その尺度をもって人は他者を測り、分析を試みようとする。その尺度が著しく矮小なしろものであったとしてもだ。無理解と誤解、そして曲解はそこに生ずる。

書くということは何かヒキョーに似たりけり、と徳川夢声は書き遺したという。世に向けてペンを振るう者はこのことを深く胸に刻んでおかなくてはなるまい。他者を扱うときは礼儀をわきまえ、出来るかぎりその卑怯に近づかないよう細心の注意を払うべきだろう。小学生が大学生の精神性を理解できる筈がないのである。他者Aのことを書きたくば他者Aと同じ道をくぐり抜けて来るがいい。当然ではないか。

この小説は人類アフリカ起源説をもとに二〇〇三年に執筆を終えた作品である。人間はみな同じ血を受け継いでいる。その基本を忘れずにいることを自らの戒めとするため、私は今回この小説を発表することにした。私のなかの根幹の部分でその真理は現在でも息づいている。

だが、人間が憎しみ合う生きものであることも私は否定しない。繰り返す。人間は、果てしなく闘争する意志を抱えている。それだけだ。

この作品の出版に至るまで、長い間S氏を中心にどれほど多くの方々の心と手を煩わせてきたか知れない。あるときは陰において、またあるときは陽において私を支援しつづけてくれた方々に、この場を借りて心から感謝の気持を表しておきたい。私は決して忘れない、と。

そして今回、プロの編集者にメスを入れられたということを実感した。実に作品の三〇%以上切り取ることを余儀なくされたのだから。三浦氏をはじめとした編集者諸氏に厚く御礼を申し上げる。

二〇〇九年六月  皇居にて記す
竹内一尊