私は永い間、母の趣味は謡曲だけかと思っていました。
ことしになって母が若いころから
短歌を書き留めていたことを初めて知りました。
母は先生につくことなく、
ただ三十一文字に思いを綴っただけだったそうです。
私はその三十一文字にいたく心打たれました。
この戦争に対する惨めさ、あとに残されたものの深い悲しみ、
また、子を思う何ものにも代えがたい深い母の愛が、
今あらためて思い起こされます。
友にも読んでもらいました。
この母の想いを兄、一登志
そして母を知る方々に見ていただきたく、
このようなかたちの本にさせていただきました。
(以下略)