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歌集

斑雪

著 / 小平サヨ子
サイズ:A5判
製本:ソフトカバー
ページ数:244ページ
発行日:2012年12月1日
内容紹介(一部)
早春

吹く疾風しずかな日差し庭隅の落葉にまじり蕗の薹萌ゆ

汲み置きしバケツに薄く氷張り弥生の朝明け日は輝けり

さ庭辺の日陰に雪は消残れどそこはかとなく春の気配す

早春の野に陽はかたぶきておおかたは透きとおりつつ消え残る雪

山茱萸の花を誘なう風寒しほのかに春の気配こもれど

萌えし黄のいまだ日の経ぬ山茱萸の花の蕾に朝霜光る

山茱萸の秀枝の蓑虫風に揺れ細かき花は揺れず咲きつぐ

山茱萸の匂い漂う中に入り細かき黄花に心ときめく

霜白く尚寒けれど門の辺に山茱萸の黄花しらしらと見ゆ

朝霧は陽に漂いて震えつつ消える予感かあわあわと舞う

明け方の霜白く尚寒き庭に梅一輪の春霞たつ

紅梅が三寒四温に騙されて風花乱るる庭に咲きたり

軒に撒く餌待つ雀等檜葉を一枚揺らし囀りやまず

手の平に春の風花受けながら紅梅綻ぶ音を聞きおり

跡切れがちに風花の舞う時雨空庭に潔き一輪の紅梅

朝霜が硝子に凍る我が部屋の軒の日向に雀鳴き合う

春の風通草の枯葉に縋りいる蝉の抜け殻かそけく鳴けり

初雪を被りしままの蓑虫が桜の枝に蕾と春待つ

早春の日差し温かく牡丹の芽光らせ匂うも風と呼ばんか

花芽待つ白木蓮が造園の車にゆさゆさ積まれて過ぎぬ

沈丁花の花咲きしかと庭に立てば霜柱かすかに崩るる音す

梅一輪咲き初め光る朝露を水色の空が吸い上げて行く

泡雪の残る疎林の木洩れ陽にさえずる小鳥昂ぶりやまず

冬型の気圧予報のありし夜を今日蒔きし花の種を確かむ