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遺稿集

戦争時代の光芒
〜ある学徒出陣慶大生の日記

文 / 忽那静夫 編 / 矢野正博
サイズ:A5判
製本:ソフトカバー
ページ数:308ページ、
カラー+モノクロ混在
発行日:2012年4月17日
価格:1,600円(+消費税)
ISBN:978-4-903935-65-2
ご好評につき、完売いたしました。
内容紹介(一部)
〔昭和十八年四月二日(金)〕

日記を付けて見ようという気になる。
日記とは、恐らく自己の心中を紙の上に吐露して
秘かに自己満足を得る為の手段であろう。
まあ、これが心の修養ともなればと云った様な気持から出発することにしよう。

差詰め先月二十九日に終わった二年振りの小田原合宿の風景について書こう。

×

二年振りに行って未だ健在だった小伊勢屋のお秀ちゃんの物寂しそうな顔と、
勢国堂の肉体から来るとも思われる様な積極的なお千代さんと、
若い未だ純情という感じのする愛ちゃんの存在は、
男ばかりの合宿を至極明朗なものとしてくれたのは有難い。

×

合宿とは恐らく技術も向上するだろうが、気持ちの融和が一番だろう。

自然話は、誰がお秀ちゃんを思うとか、
誰がお千代さんに思われているとか云う他愛のない話に花が咲く。
そしてお千代さん、あゝあれは、はすっ葉な、軽い、もてあました、
あせった等さんざん悪口を叩いて話していた。

解散会の日、山崎と吉田の口論を西野が買って出て
両者未だににらみ合い、原因は馬鹿馬鹿しい。
山崎、川村、長岐、蒔田、小塙の諸君が
板橋くだりの女の子と毎日会って遊んでいたのを吉田がつけ廻したとか、
ぶっこわしを計ったとか、皆に吹聴したとかいうことだ。
しかしこれは俺達から考えるとばかばかしいことだが、
世間には、これに似た喧嘩が何と多いことよ。あゝ人間とはつまらない猿だ。

(以下略)