★一オクターブ上の夏
この夏は一オクターブ上にいる遠すぎるあなたに恋をした
きみの声がする時だけステレオのボリュームを上げて立つキッチン
美しい歌詞だけど嘘ばかり あなたの愛はあてにならない
CMできみを見かけるたびなぜか現在の時刻を確かめている
ミッドナイトあなたの声を聴くラジオ 一人冷たい床に転がり
リアリティのないあなたを昼も夜も気がふれたかのように求める
きみの書くリリック 永遠に結ばれぬ私はエキストラですらない
ギリギリで見切れる位置にうつむいて立つきみだけが光る舞台
逆光の中で歌っているきみはまるで天馬 軽やかに翔べ
高音を出す一瞬の苦しげな表情が好きだから聴かせて
垂直に抱いたギターをきみが派手に掻き鳴らすと浮かぶ ある情景
わざとかも知れないほどに プレイするときの官能的すぎるきみ
きみの弾くギターが泣き叫んでいる 私もそんなにされてもいいよ
ラスト・ステージ 声が潰れてしまっても歌い続ける、私のために