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自分史

商法改正と共に歩んだ若き心の軌跡

編著 / 丑場直道
サイズ:四六判
製本:ソフトカバー
ページ数:178ページ(カラー+モノクロ)
発行日:2008年3月4日
内容紹介(一部)
〈論文1〉 株式の相続と株券の不所持制度

株券の不所持を申し出ていた株主Aの死亡により、この者の権利を相続したBは、引き続き株券不所持の申出をしようとする場合、株主名簿の名義書換のために、株券の返還請求を必要とするか。

一 解答主旨  株券の不所持を会社に申し出て、株券を保有していなかった株主Aと同様株券の不所持を希望している場合、相続による株主名義変更のため不所持株券を交付してもらったうえで、相続による名義書換の手続を行うかどうかという設問である。
 相続人Bがどうしても株主Aの株券を一度みたいというのであれば別論であるが、一般的に相続手続としては、不所持の株を返還したり交付したりせず、不所持のまま相続による名義書換を行なうことができる。
 すなわち返還請求は相続の場合は絶対必要条件ではないのである。

二 理由  人(自然人の場合)が死亡すれば、死亡者の有していた法律上の地位が当然相続人に包括承継されるから、株主が死亡した場合、死亡者の所有せる株式もまた相続人に移転する。これは株券が実存していようといなかろうと、紛失していようと、焼却されていても、また不所持制度により不発行であろうと、何ら関係なく株主権は相続人に承継するものである。したがって株券発行前のような場合でも同様とされている。しかし相続人と雖も会社に対抗するためすなわち株主権を主張するには、名義書換の手続を踏まねばならず、株式不所持の申出をしている場合であれば、相続による株式名義書換請求書と新株主ならば印鑑票および相続人であることを立証しうる戸籍謄本かまたは相続証拠書類と株券不所持申出書が必要となる。株券は株主Aが不所持申出をしているため手もとになくても、株主の地位は相続により包括承継されているので提出の必要はなく、したがって会社に不所持株券の請求をする必要はないとされるのである。
 実務的には、株券不発行のままで一般相続による名義書換手続を請求すればよく、その株主が不発行手続によるものでも寄託手続による不所持であっても差異はない。

三 関連事項  不所持制度について株主側の手続と会社側の手続につきいま少し詳述してみます。

(1)株主の不所持申出  不所持制度は商法二二六条ノ一一により法定されており、定款で「不所持制度ヲ採用シナイ」旨の別段の定めをしていないかぎり、株主は自己の所有する株券の一部または全部につき株券の所持を欲しない旨の申出を発行会社にすることができる。
 不所持を発行会社に申出できる資格は、記名株式の株主で株主名簿上の株主かまたは株主名簿に登録される資格を有する株主にかぎられる。
 また不所持の申出のできる時期は株主になっておりさえすればいつでもよく、すなわち株主が成立していれば株券が発行されておらなくてもよく、また株主の権利に直接影響のないところから名義書換停止期間中でもいつでも申出ができるしまた不所持株返還請求もまたいつでもできることになっている。
 この不所持の申出をした株主が株式を譲渡する場合、不発行扱をしている場合は株券の発行請求をして株券をもって譲渡せねばならず、譲渡手続は株券に名義書換請求書をそえる一般的なやり方でなければならない。不発行のまま株主名簿上だけで名義変更権利移転はできない。
 不所持制度のもう一つのあり方として、寄託方式を会社がとっている場合においてもその譲渡については、寄託株の返還を求めたうえでないと譲渡手続はふめない。
 参考までに譲渡の場合にかぎらず質入の場合においてもいったん不所持株の返還を求めねば名義の書換手続はとれないのである。
 しかし相続の場合と会社合併による名義書換の場合だけが前述のように単なる権利の移転でなく包括承継されているために株券の返還請求をして、その株券をそえて名義書換する必要はないのである。