一、夏の日のこと
(前略)
暑い暑い夏の昼下がりであった。
私は、二週間後に控えていたバスケットボールの県大会で、
ベスト8入りを目標にチームメイトと
大声を掛け合いながら練習に励んでいた。
それは、突然のことであった。校内放送があった。
「西岡明美さんのお母さん、電話が入っています。
事務室まで来て下さい」
その瞬間、私の頭の中には父の姿が浮かんだ。
「また、具合が悪くなったのだろうか・・・
今朝はいつものように仕事に行ったのに
・・・人騒がせな」と憤りを覚えた。
練習中、私の足は止まった。
ボールが飛んできても気が付かずにいた。
「大丈夫、大丈夫! たいしたことないさ。いつものことさ」
「どんまい、どんまい」
自分の太ももを両手でピシャリと両手でたたき、
みんながいる方へ走り出した。
(以下略)