『酒好きな主人』 昭和四十一年三月二十三日
「けさ家内が干し物している間にちょっと一杯と思って、コップについだら、
買ったばかりの油と間違えてしまってね。ハハ・・・」
茶の間からそんな話がきこえた。
「おや? そんなこと、けさもあったのかしら」―台所の私はそう思った。
酒好きの主人は、今朝もまた台所を手伝うふりして
しょうゆ、油、酒の並んでいる戸だなをあけるのです。
しょうゆは色が濃いからわかるのですが、
油と酒とはちょっと見ると似てます。
それに抜き足さし足でコップにつぐのですから、間違うはずです。
(以下略)