第1章 春の始まり、冒険の始まり
僕達は図書室にいた。
春が来て小学生になった僕達は、
新しい学校で、新しい友達と、新しい生活を送っている。
新しいことだらけの毎日は、とても大変だけど、とても楽しい。
「朱生君!!」
碧都が僕を呼んだ。
碧都は違うクラスだけど、
休み時間や放課後はいつも一緒に遊んでいる。
おとなしそうな見た目なのに、いざという時に頼りになるものだから、
好奇心旺盛な癖に怖がりの僕は、そんな碧都に憧れたり、羨んだりしているんだ。
でも、僕の親友。
「もうすぐ休み時間終わっちゃうよ。おもしろそうな本はあった?」
僕は無かった、と答えた。僕や碧都が好きそうな本は冒険の本。
図書室には沢山の本があって、僕達の好きそうな本も山ほどあるけれど、
そのほとんどは、漢字や外国の文字で書いてある上級生向けの本だった。
僕は少しがっかりしながら、碧都はどんな本を見つけたのか聞こうとした。
その時だった。
図書室の窓からキラキラと光が差し込んで、思わず僕達は眼を細めた。
光は導くように、ひとつの本を照らした。
その本はこんなにも広い図書室で、
まるで誰にも気付かれたくないように部屋の片隅でひっそりと、
そして本当に誰も知らないみたいに埃まみれだった。
「こんなところに誰が置いたのかな? 随分古い本みたいだね。」
僕は手を伸ばして、その本に「ふぅっ」と息を吹いて埃を払った。
そうでもしないと題名すら読めない位にぼろぼろだった。
そうして、やっと文字や表紙の絵が見えてきた。
僕と碧都は色褪せた表紙に、一生懸命、眼を凝らして題名を読んだ。
『パレット王国物語』
確かにそう書いてある。
古ぼけたその本が、何だかとても格好いいと言うか、
不思議で、ドキドキして、
僕と碧都はその場に座り込んでページをめくった。
(以下略)