雲仙
初冬の空気は
うすいのか?
それとも光の屈折率が
わるいのか?
どんなに空が晴れていても
海のむこうの 長崎の雲仙岳が
はっきりとは見えない
私は三日続けて
写真をうつしにやってきたが
うすい空気の層にはばまれ
雲仙が遠くに見える
高く澄んだ日には
山のふもとの多比良の町まで 見えるというのに
そんな時は雲仙が
どんなに近くに感じられるだろう
冬の空は
青よりも薄く
水色よりも薄く
冬の強風に飛ばされそうな
なんとも
はかなげな色なのか
有明海
南に広がる海岸線
小さい時に泳ぎに行って
でっかいクラゲが海辺に上がった
大人はおおきな棒で
みんなでクラゲを殴っていた
こどもは体中さされて
やわらかな肌が
みみずばれして泣いていた
今も毎日
満ちと引きをくりかえす
干潟はあいも変わらず昔のままだが
あさりは以前のように取れなくなった
遊び場だった海は
たくさんの生き物であふれていたのに
いつのころからか知らぬ間に
貝の残骸ばかりが目につきだして
だれもが自由に
海にはいれなくなった
海はいつから
見るだけのものになったのか?