エッセイ | 走り書きから
-
著 / 猪野年郎
- サイズ:A4判
- 製本:ソフトカバー
- ページ数:60ページ
- 発行日:令和2年7月
内容紹介(一部)
はじめに
人生を歩き始めて81年余が過ぎた。少し振り返って見よう。
高知県東部のけっして裕福とは言えない農家の3男坊に生まれた。家には内風呂はなかった、もちろん銭湯もないから、夏は行水、冬は近所の内風呂のある家に借り風呂に出かけた。我が家に父の手作りの風呂が出来たのは、私が中学生になってからのように憶えている、屋根もない五右衛門風呂のお風呂、今風だと露天風呂と言う事になるだろうか、雨の日は傘を差し掛けて入浴した。水道が敷設されていない時代だったから風呂の水くみは子供達の仕事だった。それでも自分の家に風呂が出来たことはとても嬉しかった。
(以下略)
水道が凍る
なにか久しぶりの日曜日のような気がする。冷え込む、台所のくみ置きの水がカチンカチンに凍っている。
「水を落としておいたのに」
何もかもが凍てついている、茶碗と皿が氷でくっついている、かなり温度が下がっているのだろう、台所に少しでも火の気があればそんなことはないのだろうに、そんな思いがする。
(以下略)