訳詩集 | 式子内親王 夢ほととぎす

書籍画像「式子内親王  夢ほととぎす」

著 / 露崎紋子

  • サイズ:四六判
  • 製本:ソフトカバー
  • ページ数:122ページ
  • 発行日:2018年5月16日

内容紹介(一部)

はじめに

物語を書きたいと願っていたのに書きあぐねていたころ、和歌を現代詩に翻訳するのがよいトレーニングにもなると勧められた。その瞬間に真っ先に浮かんだのが、式子内親王の「たえだえかかる 雪のたま水」のフレーズである。国語の教科書に掲載されていたのが初めての出会いだった。

深い雪に埋もれた山里の庵で一人、ずっと籠って過ごしていたある朝、木戸を開けた途端きらきらとした陽の光に心躍る自分がそこにいて、この歌の清廉な美しさ、白と光に満たされた景色が目の前にぱあっと広がった。

(以下略)

創作ノート4(あとがきに代えて)

『新古今和歌集』に収められている式子内親王の和歌の多くが、亡くなる半年前に詠まれた「正治元年百首歌」からである。

三番のきらめく雪景色と清浄さ、六三八番の池の汀に薄く氷が張りだしていく瞬間をも捉える自然の細部への観察眼、四八五番の月夜に響く砧の音を詠んだ、視覚や聴覚そして時間の移ろいなど、意識を研ぎ澄まして向こう側へと意識をいざなう想像力など、病を得た人とは思えぬ身体感覚にあふれていることに、まずは驚愕を禁じ得ない。

(以下略)

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