小説 | なみだの海〜いちえ〜
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著 / 柚詠(ゆえい)
- サイズ:四六判(H188xW127mm)
- 製本:ソフトカバー
- ページ数:96ページ
- 発行日:2017年3月1日
2017年4月5日 第二版 - 価格:800円(+消費税)
- ISBN:978-4-907446-64-2
販売終了しました。
内容紹介(一部)
ここは、何もない砂一面の砂漠。見渡す限り何もない。
そんな中、何をするでもなく、ぼーっと、一人の老人が立っている。しん、である。
彼は、何も考えず、ただ、立っている。
夜であるというのに。
空には明々と三日月が輝いている。
(イチタ、月から舞い降りる)
イチタ おじいさん、おじいさん。そんなに、ぼー、とつっ立って、何しているの?
しん (月を見上げながら)空を見ているんじゃ。
イチタ (首をかしげながら)そら? ここは、何にもない砂漠だよ。
しん (遠い目で)遠い空を見ているんじゃ。
(イチタには、何のことだかさっぱり分からない。分かるはずもないのだ。彼の行動を見ていたわけではないのだから)
イチタ ふーん。変なおじいさん。
しん (首をかしげながら)変かのう?
わしからすれば、お前さんのほうが不思議じゃ。
こんなにも、何もない砂漠に、わししかいなかったはずじゃが。
(確かにそうだ。さっきまで確かに、しん、はひとりぼっちだった。だのに、少年がそばに立っている。はて、どういうことか)
(以下略)