小説 | 帰路の点線
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著 / 星野寛貴
- サイズ:四六判(H188xW127mm)
- ページ数:188ページ
- 発行日:2022年3月18日
内容紹介(一部)
第一話 無名
竹内凪子 美容師42歳 夫はIT会社勤務
橋本康平 学芸員48歳 妻の容子は専業主婦
凪子は商店街の美容室で働く傍ら、週末はホテルの専属で、ウエディングやパーティーが催される際、美容師として働いている。遺伝的に目の難病の家系にある。最近、薄暮から夜にかけて、人とぶつかることがあり、潜在的に発病への恐怖を抱えている。子供を持つことに不安があるが、幸か不幸か子供はいない。
(以下略)
第二話 冬の琉金
台風の吹き戻しの突風で、読みかけの文庫本がパラパラとめくられていった。しおりを入れる間もなかったので、とりあえず一旦閉じた本を、適当に開けると鹿鳴館の写真が挿絵のページだった。周りに人はいない。靖国神社のベンチで、秋も深まり幾分低くなった木漏れ日を浴び、時が過去に戻っていくような気がした。日本の近代史に興味がある伊智子にとって、公園などで歴史書を読むことは至福の時である。
(以下略)