小説 | 大輪の椿
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著 / 大沢 静
発行者 / 龍ケ崎・伊達都祭りの会
内容紹介(一部)
桜散る
その日は牛久沼を渡って来た風が、豊かに実った稲穂を静かに揺らし、二人の若者の側を、軽やかに通り抜けて行った。一人は馬上の若侍、年の頃は十七才ほど。後を追って走るのは、十四、五の村の若者。
「若殿、お待ち下さい」
「久三郎、もっと早く走らねば、置いて行くぞ」
(以下略)
大坂城炎上
関ヶ原の戦いにより「天下は、勝った徳川家康の手中にあり」と思われたが、大坂城に豊臣秀頼がいる限り、徳川幕府による天下統一は、不安定なものだった。
「近々大坂方との戦が始まるであろう。伊達としては幕府軍に合流して、秀宗と共に出陣するつもりだ」
伊達政宗は、忠宗に豊臣家との戦について話した。
(以下略)