納本制度について

納本制度とは

納本制度は、国内で刊行されたすべての出版物を図書館などの指定機関に納本することを義務づけているものです。納本を受ける図書館を納本図書館といい、納本図書館には、各国の国立図書館が指定されるのが通例となっています。納本の制度化と実質的な運用は、各国の出版業界、国立図書館制度、法制などによって様々ですが、日本では、納本図書館として国立国会図書館が直接納本を受けることになっています。納本された書籍は、分類保存され、国立国会図書館が作成する国内図書の総目録『日本全国書誌』に収録されます。

納本制度の目的と仕組み

納本制度は、国内の出版物を広く収集・保存し、図書館資料として多くの人々に利用してもらい、永く後世に残し伝えていくことを目的として創設されました。日本では、国立国会図書館法(昭和23年法律第5号)の第25条で、出版物が発行されたときは、国の諸機関、地方公共団体、独立行政法人等は、直ちに法定部数を国立国会図書館に納本することが定められています。また民間の場合も、「文化財の蓄積及びその利用に資するため」、発行者は、発行の日から30日以内に最良版の完全なもの1部を国立国会図書館に納入しなければならないとされています。なお、正当な理由なく納本しなかった時は、その書籍の小売価額(小売価格がないときはこれに相当する金額)の5倍に相当する金額以下の科料に処されることとなっています。

納本の対象

納本の対象となるのは、一般の書籍をはじめ、雑誌や新聞、年鑑などの逐次刊行物、小冊子、楽譜、地図、CD-ROMやDVDといったパッケージ系電子出版物などです。もちろん、個人出版の私家本や同人誌なども納本の対象となります。自費出版の制作会社の中には、「あなたの本が国立国会図書館に納本されます」といった宣伝文句で、国立国会図書館に本が置かれることがあたかも特別であるかのような印象を与えるところもありますが、納本は「特典」ではなく、法律で定められた「義務」であるということを覚えておきましょう。

納本の仕方

官公庁の出版物は、各省庁に設置された国立国会図書館の支部図書館が、それぞれ属する省庁ごとに必要部数取りまとめて納本します。だだし、独立行政法人や地方公共団体などの多くは、郵送による納本を行っています。

一方、民間の納本は、通常、取次会社や地方・小出版流通センターを通して行われています。個人出版で取次会社などを通さない場合は、郵送で国立国会図書館の収納部宛に郵送するか、直接持ち込んで納本することもできます。なお、「自費出版の会」では、無料で納本サービスを行っておりますので、お気軽にお申し付けください。(※弊社出版書籍に限ります)また、自分の本が間違いなく納本・保存されているかどうか確認したい時は、国立国会図書館のレファレンスサービスに申し込むか、ホームページ上の「国立国会図書館蔵書検索・申込システム」(NDL-OPAC)で検索できます。

※国立国会図書館では、我が国でどのような出版物が発行されているかを日本国内はもとより、世界中に知らせるための目録として『日本全国書誌』を作成し、平成14年からは、ホームページでも公表しています。これまで、発行者から出版物が寄贈された場合、それを掲載した『日本全国書誌』当該号が送付されていました。しかし、インターネットの普及が進展したことなどにより、冊子体については平成19年6月26日刊行の2007年22号をもって終了し、寄贈者への掲載号贈呈についても、平成19年3月末までの受理分で終了する予定となっています。

国立国会図書館 収集書誌部
〒100-8924 東京都千代田区永田町1-10-1 TEL.03-3581-2331(代)

国立国会図書館以外の公立図書館への納本は、法律で規定されているわけではありません。そのため、地域や図書館の規模などによって、対応の仕方は異なりますが、個人出版物の納本については、本の内容や体裁などを見た上で、受け入れるかどうかを決めるところが多いようです。たとえば、ご自分の作った本を地元の図書館に納めたいという場合は、直接足を運んで納本を申し出てみましょう。ただし、自分史のように私的な色彩の濃い本は、納本を断られることがあるようです。また、仮に納本できても、内容的に利用頻度が低いと判断された時は、閲覧に回されない可能性もあります。しかし、あきらめることはありません。公立図書館で最大級の蔵書を誇る東京都立中央図書館をはじめ、各自治体の図書館でも分野を問わず献呈本を歓迎しているところがあります。この他、自費出版物の蔵書に努めたり、自分史のみを専門的扱う私営図書館もあり、いずれも発行者からの納本を積極的に受け付けていますので、一度問い合わせてみるといいでしょう。

東京都立中央図書館
〒106-8575 東京都港区南麻布5-7-13 TEL.03-3442-8451(代)

詩・短歌・俳句・川柳などの作品集やアンソロジー。詩歌に関する評論集・研究所・随筆集などの場合は、日本現代詩歌文学館で寄贈を受け付けています。自費出版・私家版・個人誌・同人誌・会員誌・結社誌、および詩歌総合誌などの詩歌関連雑誌なども対象となります。寄贈された方には、「日本現代詩歌文学館振興会会員証」が送付されます。

日本現代詩歌文学館
〒024-8503 岩手県北上市本石町2-5-60 TEL.0197-65-1728

愛知県春日井市では、「文化フォーラム春日井」内に、全国の自治体としてはじめて、自分史作品の収集・保存や閲覧、情報発信を行う、「日本自分史センター」を開設しています。自分史を核に、同じ志を持つ全国の人々との交流を図るとともに、日本一の「自分史図書館」を目指し、広く自分史作品の寄贈をお願いしています。

財団法人かすがい市民文化財団
〒486-0844 愛知県春日井市鳥居松町5-44
文化フォーラム春日井内 日本自分史センター
TEL.0568-85-6868

自費出版図書館
〒103-0014 東京都中央区日本橋蛎殻町2-13-5 美濃友ビル3F
TEL.03-5643-7341

日本自分史文学館
〒403-0011 山梨県富士吉田市新倉1168-1
TEL.0555-24-2000

アメリカの納本制度

アメリカ合衆国では、アメリカ議会図書館が納本図書館として指定されています。アメリカの納本制度の特徴は、納本制度と著作権登録制度が組み合わされている点にあります。著作権法407条により、合衆国国内で発行されるあらゆる著作物は、最良版の完全なコピーを2部、議会図書館の内部部局で、連邦の著作権行政を行う著作権局に無償で納本することが定められており、納本された著作物は、ここで著作権登録が行われます。納本と同時に著作権登録を行う仕組みにすることで、同図書館内に国内の文献がほぼ自動的に集まってくるようになっているのです。ただし、著作物が5部未満しか発行されていなかったり、各複製物に通し番号が付与されるような貴重なものである場合や、議会図書館著作権局長が特に認めた場合に限り、完全な納付は免除されます。一方で、正当な理由なく納本を怠った者には、罰金が科されることになっています。

イギリスの納本制度

イギリスの納本制度は、18世紀の初頭に著作権法によって規定され、その後、何度も改定を重ねながら整備されてきました。1911年、イギリス国内で発刊された図書は、出版後1ヶ月以内に大英図書館に1部を納本することが義務づけられ、これが現在まで適用されています。イギリスでは、大英図書館以外にも、ボードリアン図書館、ケンブリッジ図書館、トリニティ・カレッジ図書館、スコットランド国立図書館、ウェールズ図書館の5館が納本図書館として指定されていますが、発行後すぐに納本することが義務付けられているのは、大英図書館のみです。納本された図書は、半永久的に保存され、大英図書館の編纂する全国書誌に収録されます。なお、他の納本図書館は、大英図書館に納本された図書の複製品を1年以内に受け取る権利が与えられています。

フランスの納本制度

フランスの納本制度は、1537年のフランソワ一世のモンペリエの王令により、王立図書館への納本義務を課したことに始まるとされています。近年は、1993年に制定された法令により、発行者が4部、印刷者が2部を指定機関に納本することが義務付けられていましたが、2006年、納本する側と、される側双方の経費や管理面での負担を軽減し、少数の納本資料を確実に管理することを目的に納本制度の改定が行われました。この改定により、納本部数が削減され、現在は、発行者が2部、印刷者は1部を納本することになっています。ちなみに、発行者の2部のうち、1部はフランス国立図書館へ納本され、もう1部は国内外への寄贈・交換に利用されます。一方、印刷者の納本分は、各地域の納本図書館で保管されます。

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