随筆集 | 空なること

書籍画像「空なること」

著 / 高見澤 裕

  • サイズ:A5判
  • 製本:ソフトカバー
  • ページ数:374ページ
  • 発行日:2018年12月7日

内容紹介(一部)

雑感

小生昨年七月より渋谷区の片隅に於いて、ささやかに開業致し皆様の仲間入りをさせていただきました新入りであります。皆様に馴染みの浅い新入りの小輩がこの様な場所に一筆書くのも大変おこがましいことと思いますが本年はお前のえとに当る年だから何か書けとの御命令ですのであえて一筆とりました。色々と書きたいこともありますが今回は新入りですので新年とは特別に関係もなく、自己紹介程度と致します。

(以下略)

この世の常

二年前の五月の連休の或る日のこと。この時期には珍しく冷い雨が降っていた。毎月の健保請求の仕事を深夜迄やっていた。玄関の外で赤坊の泣く声がする。そら耳かと疑ったがそうではない。どうしてこんな時間にと思い、ドアーをあけてみる。誰もいない。しかし軒下には紙袋が雨に濡れて置いてあった。泣き声はこの袋の中からであった。

(以下略)

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